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第2話 23人のお友達
走っている。
なのに微妙な速さのゾンビさん達。
みんな一様に嬉し(そう)な表情を浮かべているのは、私が“あった”と言ったからかな?
ようやく自分達の家が見つかったのだから、嬉しいに決まってるよね。
そして私達のところに一番最初に来たのは、やっぱりヌクミズさんだった。
ヌクミズさんは頭髪がバーコードな、多分50代くらいのおじさんゾンビ。
小さな公園のブランコに座ってため息を吐いていたヌクミズさんは、私達が最初にお友達になったゾンビさんなんだ。
哀愁漂うその背中を見て思わず声を掛けたのだけど、ここまで元気なゾンビさんだとは思わなかった。
しかもリーダーシップがあって頼りになるんだよね。
「おぉい、はぁぁよ、こおぉぉぉおぉい」
今だって、歩いているゾンビさん達に急げと言っている。
本当に良かった。お友達になって。
「しっかし、増えたな。全員で22人だっけ?」
「いえ、23人ですよ。さきほどヌクミズさんが女性のゾンビを発見して連れてきてましたから」
「勝手に増やすなよなぁ、あのバーコードは。これで5人目じゃないのか。しかも全員女性とか。ぜってー、会社でスケベ課長だったぜ、こいつ」
「いいじゃないですか。賑やかで。それに23人くらい、あのショッピングモールなら余裕ですよ」
栞ちゃんの言ったとおり、ショッピングモールはけっこうでかい。
多分、ゾンビさん達が3倍に増えても狭さを感じることはないかも。
「あのぉ……ぜえいぃん、きまああぁしたぁ」
ところでようやく全てのゾンビさんが集まったみたいで、ヌクミズさんが声を掛けてきた。
「ありがとう、ヌクミズさん。じゃあ、みなさん。どうぞご覧ください。あれが私達と皆さんの家となるショッピングモールですよっ! 名前は『レインモール宵ノ――」
ゾンビさん達がわらわらと私達のそばへ押し寄せてくる。
ちょっと、待って! 押し寄せすぎっ! そんな勢いじゃ……。
「「「「「「うおおおぉ、いいぃぃぃえええぇぇぇ」」」」」」」
ゾンビさん達が歓喜の声を上げる。
そのとき、二人のゾンビさんが丘の下に落下した。
どうやら後ろから来たゾンビさんに押されたみたいだった。
「あ、落ちたぞっ! 誰だあいつら?」
鳴ちゃんは、落ちた二人の名前をまだ知らないみたい。
というか、覚えようとしてないけど。
「タグチさんとワタナベさんですよ。タグチさん(男)はねじり鉢巻き、ワタナベさん(女)は巨漢で赤いワンピースって覚えておくといいかもしれませんね」
栞ちゃんは、ちゃんと覚えていた。
さっすが、栞ちゃんっ。私も特徴を掴んで名前を覚えるようにしよう。
「ふーん、タグチが捩じり鉢巻でワタナベが赤い服のデブな。オッケー分かった。ところであの二人死んだかな」
「最初から死んでますよ。活動停止という言葉が正しいかもしれませんね。ところでそちらの坂を下っていけば、落ちた場所を経由してショッピングモールに行けますね。さあ、行きましょうか、まほろさん」
「うん、そうしよー」
そして私達は坂を下り始めた。
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