第3話 それが私達の家

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第3話 それが私達の家

 タグチさんもワタナベさんも無事だった。  でも無事っていうのは活動停止になっていないという意味で、大ケガはしていた。  タグチさんは両足の骨が折れていて、ワタナベさんに至っては首の骨が折れてたよっ。    歩けそうにないタグチさんは、ナカヤマさん(男)が背負うことになった。  ナカヤマさんは筋肉ムキムキのゾンビさんなのだけど、男らしいから女性のゾンビさんに人気があるみたい。  ところでワタナベさんだけど、最初は一人で歩いていた。  でも首が曲がっているからどうしても明後日の方向に歩いていっちゃうみたいで、今はほかのゾンビさんに手を繋いでもらっていた。    うん、それで安心だね。 「ったく、ゾンビってやつは危険予知ができねーから困るよな。あんな調子で怪我人が増えたらけっこう面倒くさいな」 「そうですね。でも彼らは土に埋めれば元通りだからいいじゃありませんか。問題なのはわたくし達がケガをすることですよ」 「そりゃ、まあ……そうだな。ところで、まほろ」  鳴ちゃんが私の耳元で声をだす。  まるでヒソヒソ話をするかのようだ。 「ん? 何?」 「いやさ、バーコ……あ、ヌクミズだけどさ、なんか不機嫌そうじゃないか?」 「え?」  まほろは後ろをちらりと見る。  ヌクミズさんは眉間にしわをよせていた。  そしてその視線はというと、女性ゾンビに囲まれているナカヤマさんに向けられていた。 「ふふ、やはりゾンビにも感情があるという証拠じゃないでしょうか。でもいざこざはいやですからね。あの二人には注視していたほうがいいかもしれません」    と、栞ちゃんが言う。 「? あの二人ってヌクミズさんとナカヤマさん? 何で? あの二人って仲悪いの」  だったら大変かも。  だってナカヤマさんもヌクミズさんみたいに、みんなから頼られる存在だから。 「ドスケベが嫉妬してんだろ。ま、相手があのナカモトじゃ勝ち目はねーけどな」 「ナカさんです。お互い素晴らしいゾンビなので仲良くしてほしいのですが……あ、どうやらここからがショッピングモールの敷地のようですね」  私達はついに目的のショッピングモールへと着いた。  感動の瞬間だ。    ゾンビと言えば、ショッピングモール――。  それが私と鳴ちゃん、栞ちゃんの答えだった。  だったらそこを住処にできたら最高だよねー、とショッピングモールを探して歩いていたのだけど――ようやくそのときがくる。 「鳴ちゃんっ!」 「へっ!?」  私は鳴ちゃんの右手を握る。 「栞ちゃんっ!」 「はいっ」  私は栞ちゃんの左手を握る。 「一緒に入ろうっ。だってここから私達の物語が始まるんだよ。親友なんだしスタートはやっぱり一緒だよ、うんっ」 「おおげさだなぁ。ま、そういうのもいいけどな」 「ショッピングモールから紡がれるわたくし達の物語、とても素敵ですわ」  二人が、ぐっと手を握り返してくる。  私は大きく息を吸う。そして――。 「せえっのっ!」  三人で一緒に敷地内にジャンプした。    ――◇パンデミックのそのあとで◇――
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