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体重が減っていた。
宇美はたっぷり一分間、体重計のデジタル表示を凝視した。そうして一旦足を降ろしてからまた乗る、という行動を三回繰り返す。
間違いなく、減っている。宇美は毎日体重計には乗らない。乗るたびに数字を見て憂鬱になるからだ。前に測ったのは一週間前、それから三キロも減っていた。
前回測った時より低い数字を見るのはいつぶりだろうか。信じられなかった。
昨日食べたのは菓子パン二つとクッキー缶を半分空けた。どだい、体重が減るようなものは食べていない。
それでも間違いなく、減っているのである。そういえば確かに最近は食べる量が減ったかもしれない。昨日だって、いつもなら菓子パン三つにクッキー缶は空っぽになるはずだ。
久々に、宇美の心に食べること以外の幸福感が溢れてきた。痩せた。ちゃんと痩せられた。
特に宇美がなにかをしたわけでもないのに、これからどんどん痩せられるのではという期待で溢れた。その日、お祝いのカップケーキを三つ、コンビニで買ってから出社した。
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