十一 撃墜 -2

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  十一 撃墜 -2

 ―*―*―*―  悪運が強いのは俺の性とでも言うべきなんだろうが、地球王も俺と同様の強運の持ち主らしい。  二人が落ちたのは、広い川のど真ん中だった。  それから無我夢中で体を動かし岸まで泳ぎ着いたまでは憶えているが、どうやらそこで力尽きたらしい。そう長い時間じゃねえとは思うが、ちょっと気を失っちまっていたようだ。  気付いたら、川原の草の上に這いつくばっていた。 「うう……」  いくら水の上とはいえ、流石にあんな高い所から叩き付けられたら堪ったもんじゃねえな。  光の結界が効いていたにしても、体がバラバラにならなかっただけでも奇跡みてえなもんだ。よくぞ自力で岸まで辿り着いたと、自分を褒めてやりてえくらいだぜ。  とはいうものの、体中がいかれちまって、まるで力が入らねえ。  どうにか顔を上げて自分の体を見回すと、あちこちが緑色の光を放っていた。はは、またマリモに助けられちまったか。あーあ。  だが、その光はこれまでよりも明らかに弱々しく、全部の傷を綺麗さっぱりといかねえ内にふうっと消えちまった。  これで終いか。  ああ、マリモちゃん。随分と世話になっちまったな。この礼はいずれ必ず、命に代えても返してやるぜ。  と言いてえところだが、どうやら約束を守るのは無理みてえだ。あいつを殺るのは、俺も命を差し出すくれえじゃねえと、とても果たせそうにねえ。  ホントごめんな。  改めて自分の手を見ると、聖剣をしっかり握り締めたままだった。  だがその刃は根本からポッキリと折れ、柄の部分しか残っていねえ。 「チッ」  俺は小さく舌打ちしてから、周りを見回した。  ここは何処だ。  川の上流には山。その先にもいくつもの峰々が連なり、そして彼方に望む空は橙色に染め上げられている。  あっちが河童の里か。  随分遠くまで飛んできちまったみてえだ。勘だが、距離にして恐らく五里ってとこか。  ふむ。  振り返ると、遠くの方にいくつもの小さな灯りが見えた。  風に乗って大勢の人間が騒ぐ声も聞こえて来る。どうやら人里が近いらしい。  まてよ? この景色は……。  そうか……。  星明かりに薄っすらと浮かぶ周りの地形を見渡して、俺は思わず苦笑いした。  悪運もここに極まれりだな。なんとここは村のすぐ近くの、イヅナ兄さんと初めて出会ったあの川原だった。  ああ、あの様子なら村は無事のようだ。良かった。  気を取り直して立ち上がり、地球王の姿を求めた。  あいつは何処だ、まさかくたばったとも思えねえが。  辺りを見回すと思った通り、猿野郎もしっかり川原に辿り着いていた。少し離れた所で、頭を振りながら起き上がろうとしている。  あっちも体を包む光は健在、どうやら気力はまだ萎えちゃいねえらしい。ったく、しぶとい猿だぜ。  俺は柄だけになった聖剣を懐に仕舞い、代わりに火鏢を手にした。無論、湿気ちまって火なんか着く訳がねえし、刀の代わりには心元ねえ。  だが、何も無いよりはマシだろう。  こうなったら、刺し違えてでもやってやるぜ。
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