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俺は、木村銀二、中学一年生。だけど、もうすぐ二年になる。
兄ちゃん、龍一、高校二年。弟、圭、小学校五年生の男三兄弟。名前なんとなくわかるだろ将棋好きの死んだ爺ちゃんが名前を付けた。みんな男だからってさ適当だよな。
父ちゃんは普通のサラリーマン、母ちゃんは・・・んー、あとで紹介する。
ばたばたと急ぎ足で歩いていると、飛び出してきた同じ中学のセーラー服。
「おばさん!」
「おはよう」
「そろって、ということは、おばさんのところにも」
並んで少し早歩き。
「弓ちゃんおはよう、君のところは何人来た」
「え?まさか、うちには一人、女性、年配の方」
「そうか、うちは三人」
「三人も?」
「とにかく急ぎましょう」
田名部弓ちゃん、彼女は俺の一個上のいとこ、母ちゃんの妹の子。
何の因果か、近所に住んでいるから、まあ人付き合いはね、うるさいほどで。
そして今の会話でなんとなくわかったかな、家は変わり者が多いんだ。
不思議な物語を聞いたり、アニメでお化けや化け物が出てきたり、人間業ではできない不思議なことが起きても、あーそういうこともあるんだろうなと思って今まで過ごしてきた。
だから俺の事もだいぶ変わりもんだと周りの奴は言う、でも友達は多いよ、それなりにな。
学校に近付くとだんだんと人が増えてきた、学生だけじゃない、野次馬だろうか、大勢の人が学校の方を見ている。
フラッとした兄ちゃんが頭を抱えた、俺はその横で支えた。
「大丈夫か?」
「わりなー」
「もうすこしだ、がんばれ」
兄ちゃんは人ごみが大の苦手、まあいろんなのを感じやすい体質なんだけどさ。
救急車にパトカー消防車も来てる。
「生徒はこっちから入りなさい」
誘導する先生の声がする。
「弓ちゃん」
兄ちゃんが何か話した。
「わかった、すぐ呼んでくる」
そう、生徒以外は入れないのだ。マスコミ、やじ馬、警察関係、もうごっちゃだ。
?
俺は立ち止まった。
銀二、お前教室へ行け。銀二!
兄ちゃんの声が聞こえなかった、というのも、そこには夢で見たあのペンギンがいたから。
なんで先生の足元にいるんだ?
「早く、生徒はこっちから入りなさい!」
こっちと手招き、手?
人間の手?ペンギンの腕じゃない、人の手だけがおいでおいでと呼んでいる?
俺は誘われるようにペンギンの方へ歩き出した。
「おい、きみ!」
「銀二!」
「銀ちゃん!」
なんでペンギンが歩いてる?っていうか、お尻には、ぬいぐるみについているタグが見える。まん丸い、ぬいぐるみ?
よちよちと歩く姿はペンギンそのものだが・・・
すっと、ペンギンが持ち上がった。
また、手が見えたんだ?
―ほらな、来ただろ?
ペンギンがしゃべった!
「お兄ちゃん、俺のお話聞いてくれる?」
俺?
ペンギンの上?そこには体のない手だけ、手だけしか見えない。
肩に手がかかった。
後ろを振り返ると、母ちゃんが少し怖い顔で立っている。
「やべぇ」とペンギンが言った。
やべえだ?
「ちょっとどきなさい」
そういうと、俺の背中から腕を取った。
「うわ!」
バン!(左肩甲骨をたたかれた
バン!(今度は右
バン!(今度は腰
バン!バン!バン!(その上、背骨叩くなよ!
「ん!」
バァン!(首の下あたりを思いきり叩かれた。
いってー!身体が逃げる。
「ここから立ち去りなさい、あなたの話は聞くまでもありません、去れ!」
すると、手を振るペンギンと、その手が消えた。
「あんた、ハー、厄介なものに引っかかって、今年の春休み、覚悟しなさい!」
「えー」
「ほら行くわよ!」
ずるずると母ちゃんに引きずられ、校門へ行くと一番の古株の先生がいた。
辺りはブルーシートで覆われ見えないようになっていた。
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