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 玉井さんが白い手でビニール袋の中をあさり始めた。 「ゼリーと、スポーツドリンクと、生姜と、あ、ネギ忘れた」 彼女が頭を抱えた。僕はその姿をぼんやりとする目で眺めていた。 「橘君大丈夫? 横になってて。ちょっとキッチン借りるね」 彼女の声が耳に優しく入ってくる。横になって目を閉じると、どこか懐かしい音がドアの向こうから聞こえてきた。その音に胸が苦しくなる。  その音が胸の中でコンコンと響く。体の熱が激しさを増し、僕を飲み込もうとしてくるような感覚に苛まれた。料理と看病をしてくれる母、仕事帰りに心配して部屋に来てくれた父の姿がそっと浮かび上がった。  昔からそうだった。辛いとき、独りの時は自然とその辛さと対等に戦えていたはずなのに、誰かが助けに着た瞬間、自分の身体を支えている芯がぼろぼろと崩れ、辛さが全身に染みわたり苦しくなった。本当は泣きたいのに意地を張って涙を我慢するのに似ていた。  久しぶりにその感覚を味わった僕は、辛いはずなのに笑った。手に取った携帯の暗い画面に映る自分の顔は、ピエロのように不気味だった。玉井さんに見られないように、顔まで布団をかぶった。    
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