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 朝九時から十一時までの時間帯は、通勤通学ラッシュも終わり、店内のラジオが鮮明に響くのんびりとしたものになる。    村本さんはお昼の時間帯の準備で、揚げ物を揚げたり、弁当の前出しをしたりとせわしなく働いている。村本さんは常に体を動かしていたいらしい。  一方の僕は、レジの消耗品補充をしながら物思いにふける。これからどう生きていこう、となかなか答えの出ない問題と向き合おうとしては、すぐにそっぽを向いた。  両親の死を知った時、世界は真っ暗な闇で覆われ、夢も希望も愛も何もかもが腐っていった。自分が死んだわけではないのに、全てが無に帰したような感覚に襲われ、それに苦しんだ僕は大学もやめ、地元にも戻った。  両親の死から数か月が経った頃、酷い虚無感を覚えた。悲しみや不安といったネガティブな感情が徐々に芽生えていき、今ではそれが花を咲かせている。嫌でもこの花に自ずと水を与えてしまう生活を送る日々、僕はどうしたらいいのかと、いなくなった両親に毎日心の中で愚痴を言った。 「晴くん、大丈夫?」 温かい優しさの籠った声が聞こえてくる。それは果てしない空の向こうから聞こえてくる気がした。 「晴くん、どうしたの?」 右の肩を叩かれ、ふと我に返る。振り向くと、村本さんが心配そうな顔で僕を見ていた。 「大丈夫?」 彼女が僕の顔を覗き込んだ。さっきの声は村本さんの声だったようだ。 「すみません、大丈夫です」 僕がそう言うと、彼女はさらに心配そうな表情になった。 「何度も呼んだのに全然気づかないから心配したよ。ちゃんと寝てる?」 村本さんの声が胸に響く。少し目頭が熱くなる。彼女の思いやりのせいなのか、もう戻らない温もりを少し感じてしまうことが寂しいからか、それともまた別の理由か、よくわからなかった。 「ごめんなさい、心配させちゃって」 「ううん、辛いことあったら何でも言いな。少しは力になれるだろうから」 「ありがとうございます」 そう言うと同時に、お客さんが来た。僕は目にじわじわと滲み始めた涙をばれないように拭い、接客をした。目の前に立つ腰の曲がったおばあちゃんはにっこり微笑んでいた。  
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