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「占いって意外と当たるなあ」
彼女がレジのお金を整理しながら小さく呟いた、気がした。
「え?」
僕は思わず声を出してしまう。彼女がそっと僕の方を振り向いた。
「あ、うん、今日の占いが当たった気がしたの。橘君が良い人だったから」
彼女の言葉に僕は少しドキッとする。玉井さんは緑色のスニーカーを履いている。
「内容がね、素敵な人に出会えるかも。だったの。ラッキーカラーは…」
「みどり」
僕の言葉が何かに引っ張られるかのように飛び出た。玉井さんはぽかんと口を開けていた。
「橘君、今日の占いの順位は?」
「六位」
「えっと、もしかして橘君ってこれ?」
そう言って彼女は眉間に皺を作り、鋭い八重歯をのぞかせながら小さく「がおー」と言った。何を表しているかはすぐに分かった。
「そう、しし座だよ。玉井さんも?」
「うん!」
玉井さんは力強く頷いて、獅子のポーズらしきものを何度も僕に見せつけてきた。
「あ、笑った。今日初めて笑ってくれた。」
彼女が嬉しそうに言った。自分の顔の筋肉が動いているのを鮮明に感じた。自然な笑顔は久しぶりだった。なぜか、ぐっと体に熱がこもる。
「笑顔すてきだねえ。」
彼女が突然そう言った。熱い血が体中をめぐり始めた。そして体のどこからか、涙が込み上げようとしていた。僕はすぐに玉井さんから目を逸らし、息を一つはいた。彼女はラジオで流れている歌を口ずさんでいた。
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