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カノジョは泣いていた。
目から流れるナミダを手でぬぐっている。それでもあふれるナミダを、流れないようにしているみたいに、目を押さえていた。
オレはパニくった。
そんな泣かなくても……。
オレはどうしていいかわからず、口をアワアワさせるしかなかった。
「どうしたの?」
突然入ってきた声だった。
目をやれば、クラスの女子が戻ってきていた。
泣いてる山下さんを見つけ、並ぶ机の間をぬってカノジョの側にかけ寄る。
それはもう吸い寄せられるみたいに、山下さんの周りにできる人のむれ。女子たちは、山下さんに「だいじょうぶ?」となぐさめている。
オレは急にできた妙な光景を見せられ、驚きのあまりその場で様子を見守っていた。その奇妙な空気が数秒続いた後、女子たちの数々の目がグッとオレに向けられた。
その時、オレが感じたのはまちがいなくキケンだ。オレの体は、スッとハッカの冷えた感じを一気に取り込んでしまったみたいだった。
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