紀ノ国坂のめんどうなバケモノ

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「ねえ?どうしたの?」  少年はこちらを振り向いた。涙は一滴もなし、やや口角が上がっているようにも見える。とりあえずのっぺらぼうではないようだ。 「あのおねえさんが、ぼくのことバケモノだって言うんだ」  男の子が指を指す方を見ると、同じJ大生と思われる女子がこっちを向いて、首を横にブンブン振って、坂を駆け上がって行った。ほぼ全力疾走、ゼミに遅刻しそうなのか? 「よしよし、こんなに可愛い子をバケモノだなんてね」  まあ、それほど可愛いってわけでもないけどね。  少年は、涙を拭いて、いや、涙を拭いているフリをして、立ち上がった。 「優しいおねえさん、ありがとう。お世辞でも嬉しいです」  あ、見抜かれてた。 「おねえさん、ぼくはバケモノじゃないの?」 「あはは、違うと思うよ。君はひとつ目の巨人じゃないもん」  それを聞いた男の子の目がキラリと光った・・・ように私には見えた。少年は重そうなランドセルを下ろして、中から骨格模型を取り出すと、サササッと形を整えた。 「おねえさんには、これは何に見えますか?」 (読者の皆さんは下の写真を参照していただきたい)f0c149ac-2446-40fb-b90f-086bdbcb03df
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