734人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「どうしてわたくしが蔑ろにされなければならないの。わたくしがこの家の長女なのに」
「お嬢様、どうかお気を鎮めてくださいませ。感情的になってはなりませんわ」
両手で顔を覆い泣き崩れるお嬢様の背中をさする。
かつては美しかった黒髪は心労のせいで艶に欠け、その肌は病的に白い。小刻みに震える痩せた肩を抱き寄せた。
――そう、感情的になってはいけない。どれだけその心が荒れていようと、世間の前では平静を装うのだ。
お嬢様を悪役令嬢になんてさせてなるものか。
最初のコメントを投稿しよう!