第51話 懐かしの茶葉

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第51話 懐かしの茶葉

 そこは茶葉を取り扱う店だった。店先に立つだけでいい香りが漂う。  ここの奥さんとは何度か話したことがある。奥さんはにこにこと紙袋に入ったものを手渡してきた。  紙袋の中には緑色のきめ細かい粉末が入っている。その緑色はディーの髪や瞳と同じような色をしていた。  どこか見覚えのあるこの粉末。もしやと思って匂いを嗅いでみたら、懐かしい香りがした。私は驚きに目を開く。 「これは、抹茶――! どうしてこんなところに」  前世の自分が住んでいた国で馴染みのあるお茶の一種、抹茶の粉末。この国でははじめてみた。つい嬉しくなって声をあげると、お嬢様たちは驚いたようにこちらを見た。 「リーフちゃんがこの地方にある食材を集めているって聞いてね。出入りの商人に頼んでみたんだよ。気にいったかい?」 「はい、とても。久しぶりに見ました。感無量です。この国でも手に入るんですね」 「うちのツテをなめちゃいけないよ。いやあ、リーフちゃんになら高値で売れると思ってねえ――っていうのは冗談だけど、買ってくかい?」 「はい、ぜひ!」  はいよと奥さんは笑って勘定をしてくれる。  お嬢様たちは抹茶の粉末を覗き込んだ。 「まっちゃ、と言ったかしら。はじめて見るわね。本当に、リーフはどこでそんな食材の情報を集めてくるのかしら」 「抹茶はお茶としても美味しいですし、お菓子作りにも使えるんですよ」 「お菓子! またリーフさんのお手製お菓子が食べられるということですね!」  マリーがきらきらとした目で見つめてくる。心なしかお嬢様もその赤い瞳を輝かせた。どうやらお菓子を作らないわけにはいかないようだ。  私は苦笑しながら何を作ろうかと考えた。  あまり抹茶の味が濃すぎても、この国の人の口にはあわないかもしれないし――。  そんなことを思っていると、ふと視線を感じて顔をあげた。そこには不思議そうな顔をするディーがいた。  そういえば、ディーは私の存在を疑問に思っているのだ。前世の記憶持ちという具体的なことまでは分からないだろうが、私の存在が他の人と違うことは感づいている。いわゆる霊感というものがあるのだろう。  なんとなく居心地が悪くなって、私は曖昧に笑った。
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