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第62話 危ない好奇心
「ディーはリーフの魂が特殊だから気になったと言っていますわ。わたくしたちには分からない何かを、彼は感じているのでしょう」
魂か、とパッサン卿は呟く。
現実主義な学者のパッサン卿はそういった類の話には興味がないのかと思いきや、ふむと難しい顔で頷いた。
「面白い。一度その芸術家に話を聞いてみたいものだな」
「え?」
意外な言葉だったから、私はパッサン卿をまじまじとみた。なんだと言わんばかりに片眉をあげて鋭い目が私を見返す。
「失礼。そういうスピリチュアルなことに興味がおありなのだなと意外でして」
「何を言うか。人の魂はどこから生まれてくるのか。魂と体の関係。死後の魂の行方。興味深いテーマだろう」
お嬢様とエマも同調するように頷いた。
この国では占いや呪いというものが日常的に受け入れられている。しかし私はどうにもそういオカルトやスピリチュアルなものを真面目に考えられない性質だった。だからパッサン卿のような学者が受容しているとは思わなくて少し驚いた。
だがよく考えたら、私自身が前世の記憶持ちという存在なのだ。前世があるのであれば、占いや呪いというものもあるのだろうか。
「貴様が本当に特殊な魂を持っているのであれば、一度じっくり研究してみたいものだな」
「や、やめてください」
怪しく目を光らせるパッサン卿の言葉に背筋が凍る。彼の探究心はお嬢様以上だ。私を研究台に張り付けにして解剖を始めかねない。
ふんっと面白そうに笑うパッサン卿から身を隠したいが、あいにくと隠れる場所はない。
「それはそうと、レイチェル様のダンスパーティーの話聞きましたよ。すごく綺麗だったって。貴族たちみんなレイチェル様に見惚れていたそうじゃないですか。やりましたね」
私を不憫に思ったのか、エマがそんなことを言って私にウインクをした。
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