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第80話 お茶会と密談
王宮につくと私たちは客間へと案内された。そこにはすでに王子がいて、ライラ様をみると微笑んだ。
王子に会うのはレイチェルお嬢様とお茶会に来たとき以来だ。美しい金髪に、青い瞳。相変わらず常人とはかけ離れた神々しさをまとっていた。
王子は私をみると、不思議そうに首を傾げる。
「彼女はレイチェル嬢に仕えていた使用人のはずでは? どうしてここに?」
私のことを、覚えていたのか。
前回会ったときはほんの短い時間だった。それに、私はお嬢様の後ろで控えていただけ。言葉も交わしていない。国の王子と、貴族の家に仕える一介の使用人なんてそんなものだ。気にも留められていないものと思っていたのに。
「リーフはずっと姉に仕えてきた使用人なのですが、私のもとで働くようにと父が決めたのですわ」
「ふむ――、レイチェル嬢の評価は貴族の間でも高くなっています。黙って見ていられなくなったということでしょうね。長らく仕えてきた使用人を取り上げられては、レイチェル嬢もお困りでしょう」
「ええ。やはり父の考えが変わらない限りは、姉の躍進にも限界がありますわね」
ライラ様は神妙な顔で頷いた。
二人の会話を聞いて、私は首を傾げる。だってこの会話は、王子相手にするものではないはずだ。
ぽかんとする私に気づいて、王子はくすくすと笑った。
「おやおや。ライラ嬢から話を聞いていませんか?」
「ごめんなさい。つい話すタイミングを逃してしまって」
ライラ様は私に向き直ると申し訳なさそうに笑った。
「殿下には全てお伝えしてあるの。私は后の座に興味なんてないし、后にはお姉様がなるべきだって」
「殿下にまでお話されてらっしゃるんですか! ――あ、申し訳ございません、つい」
思わず声を上げてしまって、慌てて謝った。王子の前なのだから、本来使用人が声を上げるのもおこがましいというものだ。しかし王子は「構いませんよ」と微笑む。隣でジルが声をあげることなく笑った気配がして、すこしむっとした。
「私が后にならないために手を打つとしたら、殿下にお伝えすることが一番だろうと思って、早々にお話をしたの。臣下が何を言おうと、最後に后を決めるのは殿下だから」
「后に興味がないなんて女性、ライラ嬢がはじめてだったから驚きましたよ。そうはいっても、ライラ嬢の望みが叶う保障はできませんが。他の令嬢が后に相応しいと判断すればその方を迎えることも十分にありますし。――ですが、バルド家はこの国でも有数の貴族。ごたついていては何かと支障もありますし、姉妹の問題はどうにかしたいというのも本心です」
これでも色々な事情があって大変なのですよ、と王子は息を吐いた。
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