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藤色
カランと軽快な音をさせてドアを開けると
その人は
「桐ヶ谷くん、めっちゃいい! 」
カフェなのに、“いらっしゃいませ”の挨拶も無いのは、俺がここの常連客であり、彼が俺の顧客でもあり、一言で言うなれば、趣味が同じ……仲間。
……ツレ、恩師、
あれ?彼は……俺にとって、なんだろうな。
とにかく藤田さんは新しい本を持って、俺の座るソファに腰かけた。
「これ、いい! 」
「うん、藤田さん、圧がすげぇ」
「あ、ごめんごめん。すきだなぁ、この色、質! 」
藤田さんはその内表紙に目を輝かせ、無精髭をひと撫でした。
その後、本に顔を近づけて、
頬擦りしそうな勢いでうっとりと言った。
「コスト、やばかった」
「あ、だろうね……」
そう言うと、藤田さんはカウンターへ戻り、本は自分のすぐ近くの棚の上段に飾る。
時々、そちらに目をやっては、微笑んだ。
すっげぇ、不気味。
だけど、あれが俺のデザインとあれば、
……吹き出しちゃうほど、嬉しい。
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