4 罪

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 アキラが言うように、店長は冴子を気に入っているようだった。ただ、問題になるような店長の行動は見られなかった。あくまで男の俺から見ればだが。  相手が嫌だと思えばセクハラになるのなら、冴子は確かに店長が好きではないようだった。  こりゃ確かに、腹の子の父親が店長ってことは絶対ないな。 「矢島さんって、彼氏いないんすかね」  俺は一緒に働いている上田さんというおばちゃんに、こっそり訊いてみた。いつでもどこでも、おばちゃんは強い味方だ。現にこのおばちゃんは冴子を気に入っていて、さりげなく店長のアプローチから冴子を守っている。  冴子が休憩に入っている時に、さりげなく訊いたつもりだったのに、上田さんがぎょっとした顔をしたので、こちらまで驚いてしまった。 「シッ」上田さんは怖い顔で、俺を制止すると、スパイみたいな目で休憩室の方を伺った。 「あんたも矢島さん狙ってるのかい?」  殺し屋のような抑えた声に、俺の声も自然と低く、囁くような声になる。 「そんなんじゃないですけど、単なる興味で」  これは本当だから、本心でそう言うと、上田さんは重々しく頷いた。 「それならいいけどさ。矢島さん家、お父さんがすごく厳しい人なんだって。仕事終わったら、すぐ帰らなきゃならないし、彼氏なんてとんでもないって言ってたよ」 「え?だって、彼女もういい大人ですよね?」  俺が驚いて見せると、上田さんは我が意を得たりと頷いた。 「そうでしょ?ちょっと、おかしいよね? だから店長みたいなのに、好かれちゃったりするんだよ」  上田さんが興に乗って、ブツブツ文句を並べたてるのを聞きながら、俺は一つの可能性が頭に浮かんでいた。  俺は無理やりその可能性を打ち消した。決めつけるのは、時期尚早だ。  だが、その可能性が本当なら、冴子はどうするだろう。  冴子というバケモノは。
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