4 罪

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 その男を目の前にして、冴子は真っ青になっていた。震える手でDVDを受け取り、なんとかバーコードを読み取ると、か細い声で料金を告げていた。  男は金を払い、DVDを受け取ると、満足したように車いすを(ひるがえ)した。  男は俺に気が付かなかったが、俺はコンビニでビールを取ってやった男だと、すぐに分かった。 「大丈夫ですか?」  俺が冴子に声をかけると、冴子は全く大丈夫ではない顔で「何が?」と首を傾げた。 「顔、真っ青ですよ。今の人、知り合いですか?」  ここにバマホがないのが痛かった。レベルが上がっていないか、今すぐ知りたい。ただ、バマホを持っているアキラから、異常の知らせは入ってこない。 「いいえ、全然」  冴子はかろうじてそう答えた。声がまだ震えている。  はっきりと嘘だと分かるが、これ以上刺激を与えるのは、危険に思えた。  冴子とレジを代わった時に、レシートの記録紙を、そっと抜き取った。レンタルしたのだから、会員だろう。名前が記録紙にも打ち出されているはずだ。  イチイナオキ サマ  出てきた名前を頭に入れる。  名前に覚えはなかったが、何となくつながるものがあった。車いすの男。
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