1、まずは、本を読みましょう。Act.05

1/1
315人が本棚に入れています
本棚に追加
/1039ページ

1、まずは、本を読みましょう。Act.05

 ボクは、小さい時から絵を描くのが好きで、誰よりも上手くセンスがあるんだと思っていた。  中学生の時は半ば強制的に陸上部に入部させられていたが、高校生になると、抑えられていたのが無くなったのか美術部に入った。ボクが入った高校が元々美術部が盛んだったというのもある。  ボクは木炭画から始まって、本格的に絵の勉強に精を出したのもこの時だった。文化部と言いながら、運動部並みのスパルタで夏休みの時は必ず合宿に行って、静物画や風景画を描いていた。正直言ってキツかったなと思う。  でも楽しかった。好きじゃなかったらこんなハードな部活なんかしなかっただろう。  努力は実を結んで、油絵を描いて数々の賞を取った。  いつの間にか、顧問の先生にも認めてもらい、部長を務める迄になっていた。だから、更に絵画の勉強をしたくて、美大への進学を決めたのも当然の成り行きだった。  でもボクは引き続き油絵の方には進まなかった。グラフィックデザイン科にボクは進路を選んだ。漫画やアニメの方が段々と好きになっていたからだ。当然こっちの方だと陰で言う奴らもいたけど、笑えば笑えとボクは思っていた。  やりたい事を幼い時から見つけて、想いを大事に育てていただけの話なんだから。ある意味ボクの「天職」なんだと思っている。  でもマンガ家に進みたい、という訳じゃ無かった。ボクはストーリーよりも、描いてある登場人物のイラストが好きだった。アニメーションを観ていた時もそうだ。キャラクターデザイン。いつかこんなキャラクターのイラストを描いてみたい。ボクは漫画よりも、イラスト集や美術書を買う事が段々と多くなった。  この職業で上手くて有名な人が、「絵師」という事もこの時に知った。  ボクは、キャラクターデザインという仕事がしたくて、段々傾倒していった。  投稿だってした。小説のイラスト見たさに小説も買っていた。  ボクはこの仕事を将来やっていくんだ。そう思っていた。  大学の進路選択で、顧問の先生に相談もした。確かに先生はボクの画力を認めていた。  でも先生は違った。もう少しよく考えなさい。君が描けるものはそんなモノで終わらないハズだ……。  先生は西洋画での画力にこだわっていた。アズゲーにも西洋画科はあるけど、受けたくなかった。実際先生にも強く勧められた。美術部が鍛えてくれた恩もあった。ボクは迷った。  アズゲーに入る事は決めていた。問題はその先だった。  覚悟を決めたボクは自分の道を選んだ。ボクは最初西洋画科を受けようとしたが志願書提出ギリギリで、グラフィックデザイン科に変更してしまった。結果的に顧問の先生を裏切ってしまった。  美術部は、三年生の夏には引退していたが、機会あれば部活に顔を出していた。それが先生達やみんなを裏切ったんだから、顔なんか出せるわけがない。アズゲーには難なく合格した。  結局、ボクはそのまま美術部に足を運ぶ事無く、卒業した。
/1039ページ

最初のコメントを投稿しよう!