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1、まずは、本を読みましょう。Act.04
真宝堂書店小豆駅前店。ボクがアルバイトに来てもう十ヶ月になる。この夏休みもアルバイトに精を出していた。
JRで一時間はかかる都会にある家には、お盆前後の二週間くらい帰っていたけど、高校の友達に会う事も無いし、絵の勉強だってしたい。親にも止められていたけど戻ってきた。
アルバイトの方が気楽だし、昔の事を忘れられる。
この夏で大学に入って二回目の季節だった。ボクももう二十歳になる。
高校の時は成績が良くて、奨学金は余裕で貰うことが出来たんだけど、生活するにはとても足りず副業でもしないとやっていけなかった。
書店のアルバイトというのは、ボクにとってはラッキーな出来事だった。勿論この場合、将来の職業が書店の店長というわけじゃ無い。
大学生になったんだから勉強の為に必要な本だってあるし、趣味と実益も兼ねている訳でもあるし。そりゃ雑誌だって読みたい。まあいろいろあるけど、本を読むのが好きだというのが一番の理由だと思う。
でも、書店のバイトを選ぶなら、都会の大きな書店の方がいい。こんな所に来たのも理由はあった。
この街にある美大に入ったから。
小豆市にある唯一の大学、私立小豆芸術大学、略してアズゲーに高校卒業後、ストレートで入ったからだ。
ボクはこの街、小豆市で生まれ育ったのではなく、隣県の県庁所在地からやって来た都会っ子だ。ここに来た時は何か山奥まで来たなぁって思った。不便に感じない事は無かった。
大学へは、電車で無理すれば通えない距離では無いが、入学が決まってからこの街にアパートを借りて移り住んだ。親の反対があったけど押し通した。
もう二年経つのか……。この街に来てから。早いものだ。
その間、生活も軌道に乗ってきた。構内でも友達が出来た。バイトだって慣れてきたし、一通り覚えて少しずつ任せられるようになってきた。
それと……、カノジョだって出来た。
これで一応、ボクは普通のキャンパスライフを送れている、と思う。
でも、大学生活に入って、今まで見てこなかった現実を知った。
それまでは全然知っちゃいなかったんだ。目の前に見えない壁が立ちはだかっているという事を。
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