吸い込まれる

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「それでね、これはね……」 僕は女の子の部屋で、女の子の永遠に続きそうなおしゃべりを聞いていた。 外から見たときは空き家にしか見えなかったが、中に入ってみると意外と片付けられており、普通の家だった。女の子の部屋も、普通に小学生くらいの女の子の部屋という感じだ。普通でないとすれば、家の中で生活音が全くせず静かすぎることだろうか。 「こっちはね、海に行った時に拾った貝がら。かわいいでしょ?」 僕はうんと頷いてから、ずっと気になっていることを聞いてみた。 「ねえ君、お父さんとお母さんは?」 「いないよ」 女の子はこともなげに答えた。また貝がらの話が始まりそうなのを慌てて遮る。 「いないってどういうこと?君一人でここに住んでるの?」 「うん、いなくなっちゃったの。今はわたし一人だよ。それでね」 女の子はとっておきの秘密を打ち明けるようないたずらっぽい顔で言った。 「わたしもそのうちいなくなるんだよ」
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