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結局、その日はそれ以上何も聞けなかった。
女の子の言葉も、静かすぎる家も、なんとなく不気味になった僕は逃げるように帰ったのだ。
しかし家に帰った僕は、色々思い返した結果、逃げるべきではなかったと後悔した。
もしかしたら女の子は両親から育児放棄されているのかもしれない。あるいは、あのいたずらっぽい顔を思い出すと、女の子の冗談なんてこともあり得る。何にせよ、もう一度女の子に話を聞かなくては。中学生にもなって小さな女の子相手にビビるなんてダサいぞと自分を叱りつけ、僕は次の日にもう一度あの家に行くことを決めた。
翌日、学校帰りに女の子の家に寄ったものの、僕はドアの前で困っていた。インターホンが壊れているようで、押しても鳴らないのだ。しばらく逡巡していたが、近所の人に不審者と思われて通報でもされたら嫌だと思い、思いきってドアノブに手をかけた。ドアノブは錆びていたが、力を入れて押したところ、鍵がかかっていなかったようでドアが開いた。
「すみませーん……」
恐る恐る家の中に向かって呼びかけてみたが、返事はない。僕は少し迷った後、靴を脱いで、昨日の女の子の部屋に行った。遠慮がちにコンコンとドアをノックすると、パタパタと走る音がしてドアが向こうからバタンと開いた。
「お兄ちゃん!」
女の子が嬉しそうに叫んだので、僕は少し引き攣った笑みを顔に浮かべた。
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