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女の子の部屋は昨日と全く同じだった。
家の中も、相変わらず何の音もしない。
「ごめんね。勝手に入ってきちゃって……」
「ううん。また来てくれて嬉しいよ」
女の子が屈託無く言う。しかし昨日のようにおしゃべりを繰り広げる様子はなく、僕の様子を伺っているようだ。僕は何から聞けばいいか分からなくなって、無難な話題から入ることにした。
「昨日見せてもらった貝がら、すごくきれいだったよね。もう一度見せてもらってもいい?」
「ないよ」
「えっ?」と僕が漏らすと、女の子は「ごめんね」と首を傾げて言った。
「あれはもうなくなっちゃったの」
「どういうこと?なくしたってこと?」
「ううん。なくなったんだよ」
女の子は昨日と同じ表情を浮かべている。僕は本能的に「怖い」と思った。
「家に吸い込まれたの。パパとママもそう。わたしのたからものはみんな吸い込まれていくの。それでね、最後にはわたしも吸い込まれちゃうの」
限界だった。僕はものも言わずに部屋を飛び出した。玄関で靴を履く足がもつれる。家の中の静寂に叫び出しそうになる。後ろを振り返ったら女の子があの表情で立っていそうな気がして、狂ったように外に飛び出した。
女の子の正体は化け物か、それとも……
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