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水力発電所
《ビー!ビー!ビー!ビー!》
次の日の昼過ぎ、デンジ達は鳴り響く警報音で強制的に眼を覚まさせられた。
「ど……どうしたのよぉ!」
無理やり起こされて、ミズキも機嫌が悪い。
「え、ええ! それが……」
いち早く気づいたオレンが、異常を知らせるセンサーをチェックしている。
「どうも、この谷の下を大型のドローンかヘリが通過したようです。赤外線センサーに反応が出ています」
「何……? まさか、ここが見つかったのか? エターナル社に」
額に皺を寄せて、デンジがモニターを覗き込む。
「いえ……そうではないようです。確かにエターナル社の反応ですが、監視カメラの映像を見る限り、谷を抜けて更に奥地へ向かったようですね。多分、見つからないように低空飛行をしていたのでは?」
監視カメラの映像をスイッチングしながら、フォレスターが飛び去っていくヘリの姿を確認していた。
「……奥地だと? こんな山奥に何かあったか?」
デンジが眉をひそめると。
「……水力発電所がある。もう、50年以上も前に閉鎖された『遺物』じゃがの」
答えたのは、ドクター・フグアイだ。
「水力発電所? 何それ?」
ミズキが不思議そうに聞き返す。
「電井は冷媒で汲み上げた地熱の蒸気圧でタービンを回して発電するが……水力発電は水の位置エネルギー、すなわち『落水の力』でタービンを回して発電する昔の発電方式でな。もう今は時代遅れで使われてはおらんから、知らんでも不思議はないのぉ」
フグアイもモニターの覗き込み、遠ざかるヘリの後ろを見つめている。
「エターナル社のヘリは、そこに向かっているんでしょうか? いったい何のために……」
オレンが不安そうにデンジの顔を見上げる。
「……知っておきたいな、その目的。何かヤな予感がする。ドクター、そこまではクルマで行けるのか? ウチの4WDで走れそうな道はあるのか? ヘリは目立つから、出来れば陸路で行きたいが」
デンジがフグアイの顔を覗き込む。
「むぅ……一応、近くまでは昔の道路があるはずじゃ。ただ、使われなくなってかなりだから、風倒木とかで封鎖されている可能性はあるでの。絶対とは言えんが」
「よし……」
意を決したように、ポンとデンジが手を叩く。
「とりあえず、偵察がしたいからな。フォレスター、着いて来てくれ。倒木処理となると、電動チェーンソーを使っても力仕事になるからな」
「承知しました。では、装備を準備します」
フォレスターがクルマへと向かう。
「ちょっ……ちょい待ち! アタシも行くから!」
慌ててミズキが名乗りを上げる。
「……何しに行くんだよ? ヘンに人数を増やすと見つかりやすくなるたろうが!」
デンジは露骨にイヤそうな顔をするが。
「いーじゃんか! 着いて行っても! アタシも興味あるんだから! それに接近戦担当の二人だけじゃぁ心配でしょ? ロングキル担当のアタシがいないと!」
「……勝手にしろ」
ミズキが『言い出したら聞かない』性格なのはデンジもよく知っている事だ。諦め顔で、クルマの方へと踵を返す。
「おい、ベル! クルマに3人分の食料を詰め込んでくれ。ドクター、片道どくらい掛かる?3時間ほど? ……じゃぁ、とりあえず9食分ほどあれば間違いない。それと、オレン。クルマはフル充電か? じゃあいい。念のために予備バッテリーも頼む。どうせチェーンソーに使うし……それと……」
テキパキと指示し、腕時計で時間を確認する。
「よし、2時間後に出る。丁度、水力発電所とやらに近づいた頃合いに日暮れになるからな」
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