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カラコロカラ
「ごめん遅くなった。」
「ううん、今来たとこ。」
いつものお店のドアが開き、彼女が入ってきた。
僕は時間に厳しいので、いつも僕が待たされる。
これは、いつもの決まり事だけど、それも今日で終わることはお互い
わかっていた。
高校生までお勉強一筋で、大学デビューを果たした僕は社会人になっていた。
地元に帰ってきたこともあり、学生時代みたいにもう馬鹿はできない。女遊びなんて、もっての外だ。
彼女とは仕事で知り合った仲だが、その春、入社したばかりで、仕事が忙しく、なかなかデートの時間が取れない。
社内恋愛禁止はなかったけど、お互い、関係がばれるのに気をつかっていたのも事実。
部署は違うので、たまに会社のイベントで顔を合わすことはあるが、
お互いそ知らぬふりをしなければならない。
長い黒髪のスレンダー美人の彼女は人気があるので、社員はもちろん
お客さんにもチヤホヤされる。
それが、僕にはガチで面白くなかった。
自慢に思ったり、誇りに思えるほど大人じゃなかったんだ。
かと言って、人目を避けたたまのデートの時に、それを口に出すのは
僕のプライドが許さなかった。ガキだったんだね。
「言いたいことがあったら、言ったらどう。」
それが、かえって彼女の機嫌を損ねたのも事実。
「 〇〇さん(僕の本名)と一緒にいるとこ見たけど、あなたたち
つき合っているの?」
会社の同僚に聞かれても、笑ってごまかすことができない真面目な
性格だった。
ぶっちゃけ、僕、遠距離恋愛の彼女がいた。
だから罪悪感もあり、彼女に対して心底踏みこみきれないところが
あった。
女の勘は、鋭い。
きっと、見破っていたに違いない。
当然、別れが来る。
その時、僕はコーヒーのホット。
彼女は紅茶、レモンテイーだった。
別れ話の内容は、省く。
思い出すだけでも、悲しくなるから。
心が切なくなる。
すべて、僕が悪い・・・・。
彼女が泣きながら帰って行ったあと、僕は彼女の口紅がうっすら付いたカップを暫く眺めていた。
無言で・・・・。
その日は、僕は国道沿いのバッテングセンターで、色々なことを、
思い出すだけでも恥ずかしくなることを叫びながら、ひたすらボールを
打ちまくった。
手にまめができるくらいにだ。
次の朝は、全身筋肉痛だった。
やけ酒を飲みすぎて、二日酔いもひどく、頭が痛かった。
何より、心が痛い。
その日から、僕は紅茶が大嫌いになった。
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