ビーム屋さん

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…いま店を出る俺の指先には、豆電球が光を放っている。 見よ、どうだこの美しい輝きは! 昭和26年と平成26年の間違いなど、ほんのささいなミスはあったが… 俺はこの輝きを勝ち取ったのだっ! 「じうえん玉」との別れは名残惜しいがっ、いつかまたどこかで会えるさっ。 背後ではビーム屋のオヤジが、おそらく塩化ナトリウムと思われる白い粉状の物質を散布している。 あれは彼固有の、喜びの儀式か何かなのだろうか? いや、俺の将来を祝福しているに違いない、ありがとう、オヤジィッ… しばらくうっとりとその輝きを愛でる、俺…。 しかしっ、何とおおっ! ふと、 この豆電球の光でいったい何を倒せるのだろう、 という一抹の不安が俺の心をよぎるではないかっ… ふふ、俺もまだまだだな… 肩をすくめて首を振り、そして気づくっ。 うむっ、人間の成長とは、このようなわずかな心の迷いを克服してこそ成し遂げられるのだな… そう、いつかこの光が世界に希望をもたらす、その第一歩をいま俺は踏みしめつつあるのだっ! 世の人々よ、救世主の誕生を祝うのだ…、俺が悦に入って指をかざして歩いていると… 「ハーイ、おヒサぁー」 いきなり背後から、のーてんきな声が聞こえる!
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