一人暮らしを記念して

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一人暮らしを記念して

 春は、出会いと別れの季節。  私も、今年の春から親元を離れ、東京で一人暮らしをすることになった。 「彩子~。引っ越しの準備は進んでるの?」 「今やってるよ~」 「明後日には引っ越しのトラックが来るんだから、ちゃんと荷造りしておいてよ」 「分かってるって。お母さん、心配し過ぎ」 「そりゃするわよ。あんたは、昔っから片付け苦手だったんだから」 「そうだけど……」  そんな会話をしていると、妹がひょっこり顔を出した。 「お姉ちゃん。私、手伝おうか?」 「いいの?」 「おこづかいくれるなら♪」 「あんたねえ……。まあ、いいや。じゃあ千円あげるから、そこの服を段ボールに詰めて」 「りょーかーい」  妹の晴子が洋服を段ボールに詰め始めるのを見届けると、母親はふぅっと溜め息をついて部屋を出ていった。
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