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槍を構えた複数の半裸の男たちが、荒野に佇む一台の車を取り囲んでいる。
その車に乗っているのが自分でなければ、なかなか面白い光景に見えたと思うよ。そう、この僕トニー・マッカランは現在ピンチという訳だ。
「バケモノだー!」
「追えー!」
「違うんだってー!!」
悲鳴と共に僕は思い切りアクセルを踏み込んだ。エンジンがフルスロットルで動き出し、甲高い排気音を吐き出しながら車はグングン加速して追跡者を引き離していく。その姿が完全に見えなくなってから、僕はブレーキを踏んで車を止めるとそのままうなだれた。
「ああ……なんで、こんなことに……」
◇
父が高校卒業祝いに車を買ってくれるなんて言い出した時点で僕は疑うべきだった。中古とはいえトヨタのカローラ、それもワゴン型のツーリングだぞ? あのケチでマッドサイエンティストな父が、僕にそんな高価なプレゼントをくれる訳ないじゃないか。
案の定、納車された車に一度も触らせてくれなかったし父はずっと車庫で何かの作業をしていた。……まさか、タイムマシンを作っているとは思わなかったけどね。
「デロリアンじゃないんだ……」
完成した車型タイムマシンを父から公開された時の僕の感想がこれ。車に乗って時間移動と聞くと、どうしてもバック・トゥ・ザ・フューチャーが脳裏に浮かんでしまうのはアメリカ人の習性だ。父もそこは気にしているらしく、不機嫌そうに鼻を鳴らして睨まれた。
「あんな旧型じゃ故障した時困るだろう? いいか、これはトヨタだぞ? メイドインジャパンだ。日本製の機械は壊れにくいからな」
「まあ、映画みたいにいちいち故障されたら困るけどさ」
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