悪夢の幕開け

　その投稿は瞬く間にバズった。時間帯は通勤通学途中の朝、そこに話題性抜群のグロい画像。噂が広まるのには十分すぎる条件だ。

　直ぐ様メディアは俺のことを取り上げた。
「話題の蟲になった男性ですが、ブラック企業に勤めていたということで、専門家によると過剰なストレスが彼を蟲に変えてしまったのではという見方をしており…」

　妹のSNSにも各業界からのメッセージが届いた。
『テレビ局の者です。どうか番組に出演しては頂けないでしょうか。』

『昆虫研究学会です。お兄さんのことを調べさせてはくれませんか。報酬は言い値で構いません。』

『その姿は正に悪魔ベルゼブブ！我が悪魔教団は貴方のお兄様に従います。難なりとご命令を。』

　そんな中で意外にも多かったのは、「可哀想」という反応だった。こんな気持ち悪い姿になってしまったのだ。まともな生活は送れないだろうと。
　世界中で『＃蟲男を救う会』のハッシュタグの下、俺を人間に戻すための資金を集めるチャリティ活動が行われ、数日で億単位の金が集まった。