悪夢の幕開け

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悪夢の幕開け

 蝶になって花畑の中を飛び回る夢を見ていた。ここなら文字通り羽も伸ばし放題。暖かい日差しに包まれて、仕事にも行かなくていいなんて...  ん?仕事にも...? 「仕事に行かないと!」  俺は夢から覚めてそう叫んだ。いや叫んだつもりだったんだが、それは声にならなかった。 (喉の調子がおかしい?)  自らの身体に違和感を覚えた俺は、布団の中からモゾモゾと部屋の隅まで這いずり、そこに置いてあった姿鏡の前で驚いた。  鏡の中の俺はなんと、虫に変身していた。虫と言っても蝶のように可愛いらしいものではない。芋虫と蝿を足したような不気味な見た目。体長も手のひらサイズではなく、丸々成人男性一人分ぐらいの大きさ。虫ではなく蟲という表現をするべき異様さだった。 「お兄ちゃん、朝だよ!起きなー。」  部屋の外で妹が俺を呼んでいる。なんとか誤魔化さなければならないと思い、必死になって言い訳を考えてみたものの、結局は声が出ないのだからどうしようもない。己の無力感に打ちひしがれながら、彼女の侵入を許してしまう。 「えっ…。お兄ちゃん…。」  妹は変わり果てた俺の姿を見て呆然とそう呟き、部屋からダッシュで出ていってしまった。無理もない、愛する兄がこんなグロイ見た目になっているのだ。ああ、俺は一体どうなってしまうんだろうか。  そう考えていると、妹がスマホを手にして戻ってきた。そして俺を写真に撮ると、SNSに投稿した。 『お兄ちゃんが虫になってるんだけどw』  
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