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あああああああああああ!もう!
やばい。これは普通にまずい。
てか何ここっ!道せっま!!!
通りづらいわこんなん!
トホホ…。なんで私がこんな目に…
遡ること約二ヶ月前。
私こと、飯田芽衣はとあるオーディション会場に来ていた。
もはや何度目かもわからないほど繰り返している行動なので特にといって緊張もない。
座っている椅子から見える光景も見慣れたものである。
このオーディションは簡単に言うとアイドルの素質がある子を発掘し専門の養成学校へGoさせる、という感じ。
でも勘違いはしないで頂きたい。
ここで審査するのはアイドルそのものになる子ではなく、あくまでも“アイドルのたまご”だ。
まぁ、つまりアイドルになる前の段階のオーディションで私は毎年落ちている、ということだ。
くぅぅっ!悲しい事実…。
だが二ヶ月前、念願の合格を果たしたのだ!それはもう嬉しくて嬉しくて。合格直後はベッドで何百回、何万回と跳ねまわり、嬉しさのあまりぽーっとしていたらフライパンの上の材料たちははいつの間にかダークマター化。かなりてんやわんやしていた。
そして今、ダークマター現象が可愛いと思えるレベルで窮地に立っています。今日は養成学校の門を初めてくぐる記念すべき日だというのに!
…どれだけ歩いてもそれっぽい建築物は見当たらないのでありんす。
スマートフォンのマップアプリに従うも、明らかに違うだろう狭い道を通らされている。
挙句、もう9時40分。
合格者は10時までにつかなければいけない。どうしましょう。
しかし、狭く薄暗い路地を通り抜けたとき。
『西田アイドル養成学校』
マップアプリよ…。
なかなかやるじゃねえか…。
でもね‥、わざわざ狭っこい道を通らんでも良かったと思うのだよ…。
そう、道は間違っていたわけではないのだ。決して。
ただ、普通に回り道をすればもっと楽だったというだけで。
まぁ、何はともあれ初日から遅刻なんていう大失態に至らなかったことに安堵する。
新しいけど、少し重厚感のある門をくぐり奥にある格好いい校舎へと足を踏み入れた。
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