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まず、入るとそこには新入生案内の看板。看板の矢印に従って進んでいく。寮の部屋一覧を見ながら少し考える。
この学校が建てられたのは4年前。
私は4年間夏期と冬期、それぞれのオーディションに落ちて、この空間を拝めないでいたのか。
そう考えると達成感が今までよりもよりリアルに湧いてくる。
ムニッ「んぶっ!」
そんな事を考えながらぽやっとしていると誰かとぶつかってしまった。
嬉しさとか悲しみとか、感情に浸るとついぼーっとしてしまうのは私の悪い癖だ。ん?あれ?そういえばムニって…、あら?あ、やばい。これは…!
おおぉぉぉおっぱい!
どうりで柔らかいと思った!どどどど、どうしよう。と、取り敢えず離れるか、うん!
オーバーヒートしそうになる思考を一旦止めてその人から離れる。恐る恐る前を向く。
…あらまぁ、可愛いお顔立ちですことお嬢さんや。
年は結構私と同じくらいに見える。
長い睫毛に覆われたくりくりした薄茶色の瞳。左目の下には泣きぼくろ。
わかりやすく容姿端麗である。
片側の高い位置に束ねた茶髪は艶があって僅かな動きでもサラサラとなびいている。
目を見開きほんのり頬を赤く染めているのがどうにもえっちい。
「…あ、ごめんなさい。ちゃんと見てなくて…。」
なんて言いながらペコペコと頭を下げるその姿は、私よりもモデル体型で背が高いくせしてまさに小動物。
…まぁ、よく考えればアイドル目指してるわけだし当然か。
て、そんなことより私の方こそ謝らなければ
「あ、いえ!私こそ周り見てなくて!ていうか…その、触っちゃってごめんなさいね!ほ、ほんとぉ…、その…」
私の方からぶつかってしまったのに謝らないわけには行かないので自分も頭を下げながら謝罪する。
しかし言葉は途切れ途切れ。
こういう時ってホントコミュ症きついわ…。
でも目の前のかわい子ちゃんは許してくれてるような雰囲気を漂わせていたのでちょっとホッとした。
「あ!そういえば時間大丈夫ですか?私は一応受付は済ませたんですけど…。」
そうだ。私、急いでたんだった。
「う、受付ってどこにありますかね?!しょ、初対面なのにすいませんっ!けど!」
「あぁ、あそこの角曲がった先に…。」
焦ってさらに壊滅的な文章になるが、かわい子ちゃんは優しく教えてくれる。有り難い。
「もしよろしければご案内しますよ…?全員が集まるおっきい式?みたいなのはもうちょっと後からですし。寮の方の確認はすぐ終わるので!」
可愛い上に親切とか、スペック高すぎるでしょ…。羨ましい限りである。
ここは、お言葉に甘えるべきなのだろうか…?かわい子ちゃんの顔が少しずつ不安げになってきているのに気づき思わず声が出た。
「お、お願いします!」
その後、受付を済ませかわい子ちゃんに軽くお礼を述べてから寮へと向かった。
先程確認した部屋の一覧表を思い出しながらこれから自分の部屋になる209号室の鍵を開ける。
部屋は至ってシンプルだがどことなくホテルのような雰囲気がある。
手前には小さいテーブル、奥の方の角にはシングルベッドが置かれており、小窓からはイイ感じに光が差し込んでいる。
「トイレと洗面所は一緒か…。で、こっちの方にクローゼット、と。」
一通り部屋の中を見て廻ってから服をクローゼットに詰め込んでいく。
その他の荷物もしまい終わったので、その後の日程を確認する。
一応、11時からは新入生説明会があるらしいが今はまだ10時になってから少ししか経っていない。
なんとなくベッドに寝転がってみる。
思いの外ふかふかで寝入ってしまいそうなので慌てて起き上がろうとする。
が、余程疲れていたのか体がゆうことを聞かない。
しょうがないのでアラームをセットしそのまま眠ることにした。
しかし芽衣は気づいていなかった。
残りのバッテリー残量が30%をきっていることに。
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