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すると部屋内から言葉が投げ掛かった。
「あら、おかえりなさい。その様子から見ると、かなりしごかれたみたいね」
「もうそりゃ大変だったよ……。おかげでヘトヘトだ……。……ん?」
自分に投げ掛けられた言葉に対して健一はそう答えるが、直後に疑問を抱く。
ここは1人部屋……自分以外に誰かいるのはおかしい。
そこで健一は声のした方向を向き、目を見開く。
「ユキ姉!?何で俺の部屋にいるんだよ!」
健一の目の前にいる女性。
彼女は富浦幸恵、健一の1つ年上の幼馴染だが、市外の高校に通っている事もあって普段会う事はない。
しかし、去年からの夏休み期間だけ彼女はここゆざわ荘にて、母親から仲居の仕事を教わっている。
だからここ登別温泉に彼女がいる事は何も不思議な事じゃない……問題は何でこの部屋にいるのか。
だが健一の疑問に対して、幸恵は少し不貞腐れた様子を見せた。
「ちょっとぉ。1年ぶりの再会なのに、随分と素っ気ない反応ね。昔はユキ姉ちゃんっていつも私に懐いてた癖に……」
「何年前の話だよ……!そりゃあ普通の場所だったら、おう久し振りユキ姉!みたいな反応してたよ!……というか鍵、どうしたの?扉鍵掛かってたよね!?」
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