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先程、冥界にて黒い靄によって吸い込まれた少女。
上下左右どこも黒一色で地面のない空間にて、少女は今もどこかへ吸い込まれていた。
「のわぁっ!どこだここは!?どこに吸い込まれるのだぁっ!?」
少女は叫びながらも、そのまま抵抗できずに風で吹き飛ばされるように吸い込まれ続いた。
★
北海道、登別温泉。
そこでこじんまりと営んでいる旅館、ゆざわ荘。
周りの旅館と比較すると圧倒的に小さな旅館ではあるが、50人程が同時に浸かれる程の大きな露天風呂を持っていた。
「はぁ……」
そんな露天風呂に浸かりながら、大きなため息を吐く健一。
今は深夜。
基本的にこの時間帯から入ってくる客はあまりいない為、実質貸し切り状態だ。
「…………」
湯に浸かりながら、健一は上に顔を向けた。
しかし、この露天風呂には六角屋根が存在する為、見上げても視界に映るのは屋根の木目で夜空を見る事は出来ない。
だけど湯に浸かりながら、六角屋根の木目を見るのも、なかなか風情があると思う。
「…………ああ、寝ちゃいそうだ……」
襲い掛かってくる睡魔。
無理もない……特訓によって精神は疲労困憊。
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