トイレに女神様などいない!

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 ここは日本の神界。  八百万を超える守り神たちが今日も人間たちのために一生懸命働いている。  彼女、弥都波能売神(ミヅハノメノカミ)もその一人で、相方の波邇夜須毘売神(ハニヤスビメノカミ)と共にトイレを守っている女神である。 「これでよしっと」  ミヅハが担当するのは主に水回り。水の神でもあるミヅハは日本中のトイレの水を清め、悪い気が家の中に入ってこないように守るのが仕事である。 「ミヅちゃん、おつかれさま~」  対するハニヤス姫は土の神であり、水洗の発達した現代では少なくなってしまったがトイレにまつわる土を清めるのが主な仕事である。 「ハニた~ん……聞いてよもうッ、最近のトイレってホントに汚い家が多くてさぁ…」  肩より少し上で切られた黒髪を揺らしながらミヅハがいつものように愚痴を言い始める。  いつも苦笑しながら聞いてくれるハニヤス姫がミヅハの愚痴を遮って穏やかな口調で言った。 「うん……。ミヅちゃんがいつも言ってること、わかるよ。私たちだって好きで便所神なんて呼ばれてるわけじゃないんだし…」  綺麗な黒髪ロングのハニヤス姫を半眼で睨みながらミヅハが面白くなさそうに言い放った。
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