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「元トイレの神をやってました、弥都波能売と申しますッ! ミヅハと呼んでください」
「トイレの女神様ってことか……ッ? すっげぇ、ホントにいたんだ」
はしゃぐ黒髪の青年にミヅハが気まずそうに返す。
「あ、でも今は転職活動中で……」
「あー……俺もある意味似たようなもんかな。前に働いてた神界の職場がその……なんつーか、ブラックでさ」
背後で銀髪の青年と大柄の青年がくつくつと喉で笑っている。
気にせずに黒髪の青年は続けた。
「冥界ならホワイトだし昔の知り合いもいないし、心機一転してやってくには良いところだと思うぜ」
「わ、わかります……ッ! 私も昔の知り合いに便所神とか言われるのが嫌で……その、私のところはそこまでブラックだったわけではないんですけど」
トイレが汚い……と、日々愚痴ってはいても、最近はお洒落なトイレも増えてきていた。きれいに掃除してくれる人だって大勢いたし、風水などに興味がある人でトイレの神を敬ってくれる人も少なからずいた。それでも……やはり汚いトイレは圧倒的に多く、心が折れそうになる時も多い。
目の前の彼も色々と苦労していたのだろうか。
ふとそんな思いから訊いてみた。
「前の職場って、どのくらいのペースで働かれていたんですか?」
ブラックだというが、そもそも彼は何の神だったのだろう。
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