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「……隆尋は、今、彼女いるの……?」
雅咲からの質問を隆尋は真っ正面から受け止める。
「いないよ」
隆尋は雅咲には真実しか伝えない。
隆尋が見ているのは、隆尋が欲しいのは、『彼女』ではなく『彼』なのだから。
今までだって、彼だけを見ていた。
今も、彼だけを見ている。
これからだって、『雅咲』だけを見つめていたい。
「彼女、作らないで!!」
雅咲の悲痛な訴えはトイレの鍵を弾き飛ばしこそはしなかったが、隆尋の鼓膜までしっかりと行き届く。
雅咲はもう感情を抑えられないでいた。
「隆尋、高校に入学したら絶対にモテる! 制服だって、隆尋はブレザーとネクタイが絶対に似合う! 高校生になる隆尋なんて大嫌い!!」
なんて利己的でみっともない主張だろうか。
それでも雅咲から出された課題なら、たとえ身勝手な押し付けだとしても隆尋は挑戦する。
素早く解読しなくてはと、隆尋が頭脳明晰になるのは全て雅咲を想っての事だ。
全ては、久保河雅咲を手に入れたいと思う、ただそれだけの至極単純な事なのだ。
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