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雅咲の理想像に近付きたい隆尋が雅咲に問いかける。
「じゃあ、どんな俺なら好きなの?」
「かっこ良くならないで!」
雅咲が怒鳴って返答しても、それだけではわかりにくいからと、もっと詳しく教えてほしいと隆尋は追究する。
「どんなふうに?」
「いつも髪をボサボサにしていてほしい!」
隆尋が自分の頭を両手でわしゃわしゃと掻き乱す。
「今日から髪を梳かすのやめるよ。ほかには?」
「いつも不潔にして、人から毛嫌いされて、誰一人寄せ付けないで!」
隆尋がなんの抵抗もなく、湿っている汚れたタイルの上に座り込む。
「風呂も三日に一回にするよ。ほかには?」
ほかには?
ほかには ――――。
ほかには、いらない。
ほかには、望まない。
ほかの人には、頼まない。
雅咲がこんな事を言えるのは、ほかでもない隆尋だけなのだから。
「隆尋の髪がボサボサでも、隆尋がどんなに不潔で臭くなっても、おれはずっと隆尋と一緒にいるよ!! 隆尋とずっとずっと一緒にいたいよ!!」
「だったら俺の傍にいろよ!! いつまでもそんな所に閉じこもっているなよ!! 早く出てこいよ!! なんで出てこないんだよ!!」
「言われなくても出て行くよ!!」
鍵のかけられた小さな箱も、『隆尋』という名前の鍵で開錠される。
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