第3章

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     一瞬だけのキスしかされなかったら、物足りなくて泣いてしまうかもしれない。  長々とキスをしてしまったら、怖がらせて泣かせてしまうかもしれない。  最初の口づけは、寄り添うように、軽く、優しく、温かく。  一度離れて、二度めの口づけは、甘く、深く、濃厚に蕩ける。 「ここは学校のトイレだよ。誰かに見られたらどうするの?」なんて忠告は、今の隆尋と雅咲の耳には全く届かない。  お互いの吐息と、鼓動と、キスが繰り返される音しか聞こえない。  それは唇が触れ合う、飽きることを知らない至福の効果音。  先程の啓輔とすみれの二人と同じだ。  相手を欲する気持ちだけが、せっかちに突き進んでいく。       
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