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キスの中断は寂しいが、隆尋と雅咲のことを待っていてくれている友達に会えないのも寂しい。
皆と合流しようとする隆尋と雅咲だが、〔 恋人 〕をお披露目しての合流を試みたい隆尋は雅咲に手を差し伸べる。
「手を繋いで歩く?」
「えっ!? それは、ちょっと……まずくない?」
「何で?」
「だって、隆尋とおれは……」
雅咲が口籠もる。
この先は聞かずとも分かりきっている。
「あぁーー、もぅーー。かたっくるしいのは無し! 無し!」
隆尋が雅咲の手を取って指を交互に絡め合い、どう見ても握手には見えない、特別な人としかしない手の繋ぎ方に困惑した雅咲は、
「隆尋!」
強引にお披露目を実行させようとする、愛する幼馴染みの名前を早口に発した。
「本当に嫌だったら、離してもいいから」
ふるえる声と、ふるえる手。
そこには余裕なんて欠片もない、虚勢を張った勇気の塊で己の心を助けて、雅咲の胸中を探っている精一杯な隆尋の後ろ姿があった。
そんな隆尋を雅咲はどんどん好きになってゆき、恋心は膨らむばかりだ。
隆尋の精一杯の感情に、雅咲も精一杯に応える。
「嫌な訳ないよ。だから、おれはこのまま隆尋の手を離さない」
この一声が隆尋を安心させる。
この一言だけで、単純にも隆尋は有頂天になる。
雅咲にしか唱えられない、魔法の呪文だ。
この後、隆尋と雅咲が手を繋いで登場したとき、啓輔、すみれ、詩帆の三人は一体どんな反応をするのだろうか。
どんな反応を示したとても、友情崩壊だけは絶対に有り得ない。これだけは自信を持って断言出来る。
堂々と胸を張り、かたく手を繋いで歩く隆尋と雅咲の密着したシルエットが、学校の長い廊下に細長く映し出されていた。
♚ ━━━ Fin ━━━ ♚
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