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「糢袈は学校ではどんなかんじ?」
糢袈は学校生活での事を家族に話したがらない。
糢袈の病気の事は学校側には伝えてあるが、それは一部の教員達しか知らない。
糢袈が孤立しているのではないかと、歩帆は心配しているのだ。
そんな歩帆の心情を読み取った弥生は、
「僕はモカと出会えた事をとても嬉しく思っているし、モカには感謝しているんです。モカがいるから、僕は学校に通うのが楽しいです」
と言って、歩帆の不安要素を取り除こうとする。
そんなふうに糢袈を必要としてくれる弥生に感激した歩帆は、さすがにもう玄関で追い返すのは失礼極まりないと思った。
「糢袈に会ってみる?」
おっとりとした口調で歩帆が言う。歩帆は切なそうな瞳で階段の奥を見上げている。
予想もしていなかった嬉しすぎる言葉に弥生は瞬きを繰り返す。
「会いたいです。でも……」
初露が……という言葉を弥生は飲み込んだ。
そんな弥生の気持ちを察したのか、目尻を弛ませた歩帆が微笑みかける。
「初露の事は気にしなくて大丈夫よ。私が上手く説得するから」
柔和な微笑みを崩さないまま、歩帆は穏やかに言った。
歩帆に促されて弥生は戸惑いつつも、糢袈に会いたいという気持ちには勝てなくて「お邪魔します」と礼儀正しく言うと靴を脱いだ。
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