第4章

5/15
前へ
/256ページ
次へ
     大通りに出ると信号機が増えて、自動車も増えて、並んだ高いビルの列が何メートルも続く。  あの落ち着いた喫茶店に戻りたいと、糢袈の歩調がおぼつかない。  歩くのは嫌いではない。  ただ、この雑音と排気ガスまみれな雑踏が息苦しい。  糢袈からしてみたら、こういった場所は心労を何倍にも膨れ上がらせてしまうのだ。  ふと何気なく横を見れば、旅行会社が貼り出している南国の広告ポスターが糢袈の視界に入った。  糢袈はそのポスターに突撃したら南国へ行けるのではないのかと、そんな四次元的な思考力を活性化させていた。  それもこれも、コンクリートの道とコンクリートの建物に板挟みされているせいだ。      
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

989人が本棚に入れています
本棚に追加