第4章

7/15
前へ
/256ページ
次へ
     糢袈が永倉の隣ではなく、永倉の後ろに隠れるようにして歩く。  糢袈は後ろから永倉を観察する。  永倉の髪は細く痛みやすそうで、頭を少し動かしただけでもサラリと(なび)き、実際に触れてはいなくても、絹糸のような触り心地なのだという事は容易に想像出来た。  糢袈の髪はフワフワしており、毛先は丸まったふうに絡まり、軽くパーマをかけているように見える癖っ毛だ。  糢袈は自分自身の髪の毛先を指先で摘まんでみる。  とてもではないが、サラリとした触感という感想はでてこない。  制服が似合いすぎて、かっこ良い。高身長で羨ましい。嫌味のない、素直な性格に憧れる。  糢袈は永倉に対して素直にそう思う。  永倉が糢袈に執着するように、満員電車で目が合った時から、糢袈も永倉に執着していた。  糢袈は、どこかしら永倉弥生を意識しつつある。  意識させるように仕向けられている気がしてならない。  それもそのはずだ。  今の糢袈の心には、乙女じみた願いが住み着いている。  永倉の髪に、触りたい。       
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

989人が本棚に入れています
本棚に追加