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めりるは一旦、教室から飛び出して頭の中を整理した。
このプレゼントが、もし渚紗好みでなかったらどうしようとか、渚紗が既に似たようなハンカチを持っていたらどうしようとか、先程からめりるはそんな事ばかりを悶々と考え込んでいる。
まだ、リョクや渚紗、蘿磨、与壱とも出会う前のめりるは他人にお金を渡し、お金で愛情を買い、それだけで自己満足していた。
でもそんな愛情は全て偽りにすぎないのだと気づいた。
めりるは高校受験の時の事を思い返していた。
あの頃のめりるはリョクが自分の全てだった。リョクだけしか見えておらず、本当の恋を知らず、本当の友達と呼べる人が誰一人としていないめりるの生活はリョクを中心に回っていた。
リョクと同じ高校に通えると信じていたのに、まさかリョクが違う高校を受験していたとは想像すらしていなかっためりるは酷く落ち込んだ。
そして自分はリョクから裏切られたのだと、落胆は憎悪へと変わっていった。
あのリョクへと向けられた異常なまでの執着心が今ではすっかりなくなっているのだから、本物の恋愛感情を懐に住まわせた事はめりるにとって大きな成長でもあり、新たに大きな狂気を生んでしまったといっても過言ではない。
もう、渚紗は登校してきて教室に居る頃だろうか。
めりるは教室に戻ることにした。
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