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冴子が小学校の頃、親が離婚した。冴子は母元に引き取られた。その母親がだらしない人で、自分でお金を稼ぐ事ができず、いつも周りに男がいた。いいとこのお嬢さんだった母はその地位を狙われてただけだったのかもしれない。そのうち男たちは冴子を手なずければ母に気に入られるというもくろみから、冴子の機嫌をも取るようになった。冴子が喜ぶと思うものを買ったり。
冴子はそれがわかると、男たちについそれを伝えてしまった。それから生意気な子供だと思われ、母親がいない所で殴られたり蹴られたりするようになった。母親の前でだけいい顔をする。母親は気付かない。冴子はそんな中で身につけた。演技をするということを。
素直に可愛い子供でいれば虐待されたりしない。母は後にいいところの跡取りと再婚した。跡取りは子供が嫌いだったけど、その父母、祖父と祖母は冴子を可愛がってくれた。その祖母からあの指輪をもらったのだ。祖母は母が財産目当てで結婚したと散々言っていた。冴子はいつもフォローをするが、その時だけ、祖母はその通りだと言う。孫にだけは甘い顔をするのだ。それが母の付き合っていた男たちと同じだと思い、冴子はその演技が面白くて続けた。すぐに飽きたけど。
高校に入ってから、冴子は男の人と付き合うようになった。でも、結局は母のことが頭から消えず、財産目当てだとしか思えなくて、ずっと騙された振りをしていた。
冴子が一回だけ、本気になった人がいた。だけど、その人は二股をかけていて、冴子はただの金ずるだった。それに気付いても冴子は何もしなかった。ただ側にいたかったから。なのに、気持ち悪いと言われ、冴子は捨てられた。
冴子はだんだん何も感じなくなってきた。騙される事にも慣れ、人を心底信じてないと感じる自分。自分は何のために生きてるのか。ただ演技に酔いしれ、一時の楽しみのために?
去年やっと母から離れられた。それでも冴子はまだずっと捉えられたままだ。自分に吐く嘘も何もかもどうでもよくなって、嘘に溺れてしまおうとさえ思った。それなのにどうして義雄は本当の事を言ってしまったのか。
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