奇巌病の幼馴染み

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「そうだ。良いこと思い付いた」 わざと明るい声で前を行く優奈に話し掛けた。 聞こえているはずなのに、こちらを振り返るでもなく歩を進めるだけの彼女。 不機嫌か。 またため息をつきながら言葉を続けてみる。 「お前さ、誰のこと好きか知らねえけど、そいつにさっさと告白しちまえよ」 「……」 「なあ、聞いてんの?」 優奈の肩を後ろから掴んだ。 「だからっ」 その手を振り向きざま、思い切り振り払われた。 「だから、しつこい!告白はしないって何度も言ってるでしょう?」 「じゃあ、いつまでその顔でいるんだよ」 「それも何度も言ってる!浩樹には関係ない!」 固そうな皮膚の隙間にようやく見える目が潤んでキラリと光る。 「……関係なくないだろ。幼馴染みなんだから」 「別に良いよ、他人のフリしてても。行きも帰りも別に一緒に歩いてくれなくて良い。浩樹も嫌でしょう、幼馴染みがこんな顔なんて」 自虐的に放つその声があまりに切ない。
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