森の深くの愛の在処

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 傷だらけの幼少時代。  無用と呼ばれた青春時代。  望まぬ形での結婚。  子を成せぬ体への罵倒。 「女は子を成すのが仕事だ」  日々追いつめられる精神。  ようやく産まれた愛しい我が子。  目を離した隙に起こった事故。  山に捨てられた我が子。  発狂。  そして山で自死。  山の何かに体を浸食され、徐々に自分でない何かになっていく。  それを拒絶しる気力すら、もう、ない。  自分ではない何かになり、我が子を探し続ける。  辺り構わず人とみれば掴まえ、魂を預かり、種を植えて現世へ返す。  種はやがて肉体を増殖させ、愛しい我が子を探す蔦となる。  魂を自分が預かればもう失われずに済む。  その人は自分の愛に包まれて、魂を失う事が無くなる。  その祝福を以て、我が子を探す事を託す。  もう見つからないと知りつつも。  繰り返す、繰り返す。  もう止めたいのに。  繰り返す。
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