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見えずとも、自分の顔が紅くなっている事くらいは、容易に想像がつく。
どうせ今まわりにいる連中は、うわコイツ厨二病だとかなんだとか思っているんだろうが、この際、そんな事はどうでもいい。
……ただ。俺は、ちゃんと、言いたい事を、言った。
ただ、それだけなのだから。
「…………」
ぷしゅう、という間抜けな音と共に、電車の扉が閉まる。
そこで、ずっと背を向けていたレンナが、扉越しではあるが、ようやくこちらに顔を向けてくれた。
「…………」
レンナは、笑っていた。
それは紛れもなく、あの頃の、レンナの笑顔だった。
『ば・ー・か』
扉が閉まっているため、彼女の声は聴こえない。
ただ、その唇の動きから、彼女の『声』は、ちゃんと、俺に届いた。
電車が、ゆっくりと動き出す。
俺はレンナの事をじっと見つめていたが、やがてレンナは、ふう、と息を吐き出して、もうひとつだけ、言葉を放った。
『ま・た・ね』
その言葉は、きっと『永遠の別れの言葉』ではなくて。
俺は彼女が見えなくなるまで、ずっと、馬鹿みたいに叫び続けた。
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