久しぶりの自宅・久しぶりの家族

5/7
217人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
なぜ帰ってこなかったのか? それは、お互いの気持ちを確かめあっていたから……。 優しいあたたかな唇。 想いを伝える優しい言葉……。 抱きしめられた時のぬくもり……。 全てが再生される……。 もちろんそれは言えないけど……。 だって……。 「父さん…長瀬さんに会って欲しい」 理由も何もストレートに伝わる言葉が唇から自然に出た。 そして、昨夜は一緒にいた事伝えた。 彼の部屋で一晩、二人きり……。 昨夜一緒に二人きりということは、大人の両親はちゃんと理解するだろう。 「ふしだらなっ!」 貞操観念強い昭和戦後数年経ってから生まれた両親。 おそらく激怒されることを……、覚悟決めた。 ぎゅっと目を瞑る。 瞑って、父の第一声を…きっと頬に喰らうであろう一撃を……身を固くして待った。 私の反射神経で、繰り出される鉄拳を寸前でかわして何度も怒られたことか……。 ……? いつまで経っても、それは無い。 片目を開ける。 見えるのは笑顔の母さんと表情の読めない父さん……。 二人は互いに何かボソッと何か話して、うなづいて……。 「響…今度…同好会に連れて来なさい」 父さんにしては優しい声。 目を開けてその顔を見ると、 「朝メシは食ったのか? 食べてないんなら、母さんに言いなさい」 強面のその顔には笑みと複雑な何かが 感じ取れた……。 ごめん。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!