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「響ちゃん〜祐也と稽古してんの
『長瀬くんならいーな♪』なァ〜ンて…
ふふっ♪考えててるだろ?」
石野さんは、ちょいと的外れな事言ってきた。
長瀬くん、……つまり慶司の事を考えていたというのはーーー正解。
だけど、
「違いますよ」
そう言い、面紐を結ぶ。
結び方は蝶結び。
「ほら、女子も最近、上段とる選手見るでしょ?
だから…乾さんと城島が稽古してるの
参考になるなぁ〜♪って
思っていただけですよ〜」
蝶結びした面紐の長さをきっちり揃えて
左右に、パンっとして締める。
全ての紐が結び目から約40cm。
その後、念の為頭部に指先で面紐が
ねじれてないか?
それを確認していたら……
「またまたァ〜♪そんな事言っちゃって
稽古のあとのランチ終わってからさー
長瀬くんン家に電話してみたら?
意外と帰ってきてるかもよ!
親父さんの実家からさッ♪」
石野さんも、慶司がお父さんの実家の
里帰りに出かけてるの知ってる。
「電話番号なら持ってるしさ
忘れてるなら教えてあげるよ」
ニコニコしてるけど……
「知ってますよ〜♪」
そう言って小手はめて、石野さんから離れた。
ごめんなさい!石野さん。
実は慶さんと…♡な仲なんですぅ。
もう既にッ!
……なんて、交際宣言するか否か?
話し合いもないまま、私と慶司はあの日それぞれ別行動の日々を送ることになった。
だから、真実を勝手に言えないの。
「二人とも…付き合っちゃえよ!
お互いに気になるんだろ?
いつも一緒にいるしさ〜♪」
こう言ってくれてる石野さんに
真実を教えたら……
きっと喜んでくれると思うけど…
今は言えないの…
石野さん、貴方の同期の乾さんが…
実の兄貴でもないのに………
私の初恋に関して、うるさいから。
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