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「響ってば…ふふっ…ケイ君か…♪
よかった…自分から好きな人出来て…」
母さんは、コーヒーメーカーのサーバー傾けて氷たっぷりのグラスに濃いコーヒーを注ぎ、アイスコーヒーを作ってる。
合宿に途中参加する日曜日の朝、
「慶さんとの事はご想像にお任せします」
……なんて曖昧なこと言って、軽ワゴンで私が出発して行ったあと、妹とあれやこれやと
勝手な予想と想像していたそうで……。
「心配したんだから…
響は女の子なのに、一度も恋しないで
お嫁に出されるンじゃないって…」
しみじみ呑気に言いながら、母さんは自分のグラスにもコーヒー注いでるけど、
『お嫁に出される?』ちょっと待って!
「なに?それ…初耳!
私が……お嫁に出されるって?なにっ!」
一瞬だけ声のトーンが高くなるのを、梅干しを口に放り込まれ、その酸っぱさと塩辛さに口を窄める。
山口家と言うか母さんの実家の梅干し。
酸っぱくて、でもいい香りなのは母さんの母さん……、東北の祖母から継いだもの。
毎年2・5階のバルコニーで干してる自家製だ。
「響…しぃー」
東北美人の代表みたいな母さん。
ノーメイクなのに派手めのお顔。
なんで、この会社のおカミさんなのよ?
アーモンド型の目、私よりも穏やかすぎる目元。
先にここで職人として修行してる年が離れたお兄ちゃん……私の伯父に、呼ばれて上京してこっちの高校へ進学。
バイトとして、ここで働いていた。
それで父と……、要するに当時の社長の息子と出会っちまったンだけど。
父さんは進学校でありスポーツ強豪のK高、剣道部の一期生。
不良のくせにスポーツ万能で特に悪童故に根性治すのに桜乃鷹武道館で6月6日に始めた剣道が得意でK高卒業まで大活躍した伝説の人だ。
私には強面のおっさんだけど。
やたらに家にカップやメダルゴロゴロしてて
私はその煌めきに目を奪われ…
バレエをやめたきっかけを作ってくれた人だ。
あっ!それよりも、母さん…どういう事よ!
私の疑問に母さんは、母らしい顔つきになり…
「そのままの意味よ」
そう言ってため息ついて、
「たぶん、お父さんもほっとしてると思う…けどね」
にこり♪
はぁ?なにそれ?
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